Tommyball

コンセプトは「スポーツ×○○」。スポーツに関連するいろいろなものを書いていきます。

歴史が築かれた瞬間。

「歴史を築け 岡本和真」

 

2年目でこの前奏の応援歌が与えられたとき、まだ岡本は「期待の若手」でしかなかった。
3年目にレフトで開幕スタメンを勝ち取るも、結局その年は1軍ではパッとせず。
本当に歴史を築いてくれるだろうか…大田泰示パターンで放出され、移籍してから活躍するのでは…と、正直不安ではあった。

 

今年、村田修一が放出されたときも、「.260 15HRくらいやってくれれば十分でしょう」というのが正直なところだった。おそらくそう思っていた巨人ファンの同志も多いことだろう。

 

正直、4月の活躍だけでももう十分だと思っていた。

 

それが、気づけばシーズン中盤に入っても、3割をキープ。

気づけば、4番起用。その最初の日に、自分で記念すべき日を祝うかのように、特大アーチで10号をぶち込んだ。

そこから、あれよあれよという間に20HRに乗せてしまった。ドラ1で期待されていた選手とはいえ、全く畏れ多い。

最初は「まだ早くない?今年1年は下位打線でのびのび打たせよう」と言っていた僕みたいな人間も、気づけば「4番は岡本しかいない、彼で打てなければしょうがない」と思うようになった。

 

…そして、9月8日。菅野の快投を後押しするように、30号HRを甲子園で放つ。

「ついに30号…これで松井以来の生え抜きスラッガーの爆誕だ!」

と、目の前で、スタンドに飛び込む節目の一発を見届けながら興奮したのを覚えている。

 

シーズン打率3割もほぼ確実となり、30本も1か月近くを残し確定。あとは7打点に迫った100打点が…というところでパットンのデッドボール騒ぎ。

100打点も、気づけば、「今日3打点打たないといけない」ところまで追い詰められての今日だった。

 

第1打席から、2アウトランナー2塁のチャンスが回ってくる。

…が、ここはセンターフライ。

 

2打席目は、1アウト満塁。外野に飛ばすか、フォアボールを選びさえすれば、打点は稼げる状況。

自信をもって見逃した球がまさかのストライク。見逃し三振。

この瞬間、「ダメか…厳しいか…」と思った人がほとんどだろう。かくいう自分もそうだ。

 

その後、3打席目はランナー無しで凡退。

この時点で、5回の表。あと2打席がいいところだろう。

 

「2打席で3打点かぁ…結構な確率だなぁ。」

 

初回にエラー起点の嫌な流れで先制されたジャイアンツだったが、チャンスで2度凡退した岡本をカバーするべく、3回には阿部が、5回には陽が、2点タイムリーを放ち、4-1にする。

が、そのリードを、またエラーがらみで吹き飛ばしてしまった。6回途中でメルセデスが降板後、4-4の同点。

嫌な流れのなかで迎えた7回表。岡本の第4打席。

 

桑原の2球目を振りぬいた、その打球は、高い放物線でスタンドへ。

 

勝ち越しだ。

 

…生憎、ランナー無し。大きなホームランだが1打点。

 

次の打席にランナーを複数人置いてタイムリーか、はたまた2ランか。相変わらず厳しい状況だった。

 

しかし、巨人の第89代4番打者の、今年98打点目は、嫌な流れを吹き飛ばす、CSを引き寄せるのに十分すぎる一発だった。これだけでも、十分4番の働きだ。

 

ラッキーセブンに勝ち越した巨人は、その後の小林のセーフティスクイズでもう1点を加える。
そして8回。また打席が回ってきた。

 

それも、直前にタイムリーツーベースのマギーを二塁において。

 

その時は、外野で見ていても、生きた心地がしなかった。

 

最初2球のボールを見送ったあと、フルスイングの3球目はファウル、4球目は空振り。

 

5球目を見送り、フルカウント。

 

そして6球目。思いっきり振る25番。

 

「あぁ、ファールか…アウトじゃない…」

 

安堵の息が漏れる。

 

7球目。またファール。

 

もう、狙いはツーランホームランのみだったに違いない。

 

そして、8球目。

 

思いきり振った打球が高く上がる。

 

「入れ…入ってくれ…!」

 

僕だけじゃない、甲子園の巨人ファン、テレビで見ていた巨人ファン全員の思いを乗せて打球がレフトへ飛んでいく。

 

…外野手のリアクションを見て、両手を突き上げた。これは入るだろうと確信した。 

 

次の瞬間、僕らは歴史の証人になった。

 

岡本和真、史上最年少での3割30本100打点を達成。

 

その30本達成の瞬間と、100打点達成の瞬間を、僕は目の前で見届けることができた。まるで奇跡のようだ。

 

600打席立って30HRの選手が、ある打席でホームランを打つ確率は、単純計算で5% (20打席に1本)。

 

2打席連続で打つ確率は、1/20を2回かけて、1/400。

 

その、400分の1が、こんなに劇的な場面でやってくるなんて。

 

「ツーランしかない」状況で、本当にツーランを打った4番。

 

「岡本和真は持っている。」

 

そう確信した瞬間でもあった。

 

 

「歴史を築け 岡本和真」

 

今年、大阪で最後の勝利の2次会は、スタメン1-9のあと、岡本の応援歌と続いた。

 

間違いなく、この男はこの1年だけでも、歴史を築いてくれた。

それも、きっと今後続いていく長い歴史を。

 

古くはON、原辰徳からはじまり、松井秀喜、高橋由伸、阿部慎之助、坂本勇人と続いてきたスターの系譜を、この男が継いでくれるのだろう。

 

優勝争いには絡めなかった。それでも、新たなスターの誕生に、それだけでも「巨人ファンでよかった」と思えた、そんな1年だった。

 

 

「菅野に始まり菅野に終わった」由伸ジャイアンツの3年間も、なかなかに粋な演出だったが、今日はなんといっても岡本の日だったといえるだろう。

 

そう、今日が、由伸ジャイアンツとしては最後の公式戦。

仮にCSを勝ち進んでも、大阪での由伸の最後の雄姿。

選手として18年間、監督として3年間。21年間背番号24を背負い続けた男が、ジャイアンツのユニフォームを脱ぐ。

 

もう、「由伸ジャイアンツ」コールをすることもないし、「フィールドセンスを見せつける 男背番号24」の応援歌を歌うこともない。

今後仮に巨人復帰があるとしても、間違いなく、1つの時代が終わろうとしている。

 

何事も、変化が望まずともやってくる。

僕たちは、その変化を受け入れないといけない。

 

その中で、僕らの世代の「巨人の顔」の最後の雄姿を見届け、同時に、新たな「巨人の顔」を見届けることができたのは、幸せな変化だったのかもしれない。