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コンセプトは「スポーツ×○○」。スポーツに関連するいろいろなものを書いていきます。

「ナッシュビル唯一の全国区選手」のトレードを考える

2年連続の地区優勝をしておきながら、プレーオフでは4年ぶりの1回戦敗退など、失意の2018-19シーズンだったプレデターズだが、ドラフト2日目に賭けに打って出た

 

チーム唯一の全国区選手というのもダテではない、PK・スーバンをトレードに出した

お相手は、ニュージャージー・デビルズ。アメリカ北東部だが、名前順でチームを並べると、お隣さんになる。
スーバンが元居た、モントリオール・カナディアンズの反対側のお隣だ。

モントリオール・カナディアンズ→プレデターズ→ニュージャージー・デビルズと、1つずつ動いているので、次はNYアイランダーズか!?と言いたくなるがそれは置いておこう。

 

www.nhl.com

 

なぜ、2017年にはスタンリーカップ決勝進出、その後2年連続地区優勝を達成し、オールスターも複数人排出した、文字通り「今が旬」のチームの中で、「チーム唯一」の全国区と言い切れるのか?

 

ナッシュビルの選手の中で、ファン投票でオールスターに選ばれた唯一の選手なのだ。

そして、今後出てこないかもしれないNHLシリーズのカバー・アスリートなのだ。

NHL 19 (輸入版:北米) - PS4

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実績・人気を兼ね備えていないとNHLシリーズのカバーにはなれない。クリロナやメッシがカバーアスリートになるような、FIFAシリーズを見ていたら当然だ。

 

オールスターの話をすると、ナッシュビル・プレデターズの歴史では、これまでのどの選手も、基本は監督推薦だった。

 

…そりゃそうだ。元は、決してホッケーのマーケットではない土地の、名もないエクスパンション・チームから始まり、10年前なら、シドニー・クロスビーや、アレックス・オベチキン。現在ならコナー・マクデイビッドなど、全国区と言えるスーパースターは、ナッシュビルにはいなかった。

強いて言えば、PK・スーバンのトレード相手だったシェイ・ウェバーはオールスター常連だったし、今なおプレデターズにはライアン・ジョハンセンやペカ・リネーに、フィリップ・フォースバーグなどスター選手がそろうが、それでも「全国区」かと言われると、そうでもない気がしている。(若いフォースバーグにはぜひそうなってほしいが…)

 

それが、ウェバー⇔スーバンのトレードで、ファン投票でオールスターに出れる選手がやってきたのだ。

ここ数年のNHLのオールスターは、各地区の投票No.1選手がキャプテンになるのだが、PK・スーバンはナッシュビルに来て、2年連続でそれを成し遂げた

 

コミュニティでの活動に積極的なこともあり、スーバンのもともと所属していたモントリオールでも、今なお人気は色あせないという。

 


P.K. Subban donates $10M to Montreal Children's Hospital

 

…じゃあ、なぜ放出したのか。
答えは明確で、ディフェンスはどうにでもなるが、攻撃の層が欲しいからだ。

 

見返りは、スティーブン・サンティーニ、所謂「プロスペクト」のジェレミー・デイビス、そしてドラフト2巡目指名権×2 (2019年・2020年) だ。

スティーブン・サンティーニは、毎年40試合近い出場と、年間1ゴール or 2ゴール、5~10ポイント程度を3年連続で続けている選手だ。おそらくナッシュビルではレギュラーにはならないだろう。

そして、ジェレミー・デイビスも、現地の評価では「今回の見返りで一番価値のある選手」だが、NHLでプレーするかどうか、は50-50という見方が多そうだ。

2019年のドラフト2巡目指名権 (全体34位) は、トレードダウンでドラフト2巡目 (全体45位)・3巡目 (全体65位) の指名権に変わった。

2020年のドラフト2巡目指名権を合わせても、到底スーバンクラスの選手に対する見返りとはいえない。

 

…じゃあ何なのか。若手の登用的な意味合いもあるが、何よりもサラリーダンプだ。

 

右利きのディフェンスマンは、プレデターズにはありあまっている。

かつてのドラ1、ダンテ・ファブロが今年NHLデビュー。

レギュラーシーズンはわずか4試合出場ながら、NHL初ゴールも決め、プレーオフでは6試合に出場するなど、早くも信頼を勝ち取った。


Dante Fabbro #57 (Nashville Predators) first NHL goal 06/04/2019

それだけでなくとも、フレデリック・アラードや、アレクサンダー・キャリアといった選手も控える。彼らにとってはチャンスが増えるのだ。

プロ野球でいえば、松井稼頭央がメジャーにいったら中島裕之がブレイクしたみたいなもんだ。

決してスーバンクラスの選手になるとは限らないが、NHLトップクラスのディフェンスマンを育て続けてきたプレデターズだ。今なお、NHLトップクラスの守備陣を誇っており、仮に彼らがスーバンにならなくなって何とかなる。

 

で、本題のサラリーダンプ。

サラリーキャップのNHLでは、キャップスペースを開けるためのサラリーダンプが定期的に発生する。
メジャーリーグで言う「死刑囚契約を引き取ってもらう」トレードに近いが、どちらかというと、キャップスペースを開けるために、死刑囚でなくとも高額契約の選手を引き取ってもらう、的な色合いが強いか。

例えば、サンノゼ・シャークスのレジェンドで、2017年にトロント・メイプルリーフスに移籍したパトリック・マーローが、ドラフト初日に、マーロー+条件付きドラフト1巡目指名権 (2020年)+ドラフト7巡目指名権 (2020年) ⇔ ドラフト6巡目指名権 (2020年)というトレードで、キャロライナ・ハリケーンズに移籍した。

この背景には、若いスター選手であるミッチ・マーナーの契約延長を確実に行いたい、というメイプルリーフスの狙いがある。

(どうでもいいのだが、スーバンとマーロー、年齢は違えど、チームの顔として長年働き、NHLでアウォードを獲得するほどに活躍し、新しいチームに移籍し、2019年にサラリーダンプで再度移籍、お互いに3チーム目を経験する…なんとも不思議なものだ)

 

NHLのロースターは23人、サラリーキャップはおおよそ$80Mで、そのうちの$6.25Mがマーローのサラリーキャップだったのだが、比較的若いメイプルリーフスは、若手選手がエントリー契約から新契約をサインし、年俸が大幅増加するフェーズに来ている。
例えば、チームの顔ともいえる、オーストン・マシューズは、2018-19年はわずか$0.925Mキャップヒットだったが、新契約で$11.634Mのキャップヒットになる。

そうすると、あと数年で引退濃厚なベテランの$6.25Mというのは、若手選手の新契約の阻害になりかねない。それゆえに「契約を引き取ってもらう」ようなトレードが発生するのだ。

 

今回の、スーバンのトレードも、結局は「契約を引き取ってもらう」形のトレードだ。
なんといっても、ナッシュビルではぶっちぎりの全国区での人気とともに、チームトップの$9Mというキャップヒットを抱えていた。

 

…だからこそ、見返りに期待してはいけない。メイプルリーフスはドラフト1巡目指名権をつけて、ようやくマーローを引き取ってもらえたのである。
そう考えると、ベテランと、今が旬の選手という違いはあるものの、プレデターズはドラフト2巡目指名権×2までついてきて、かつ、$9Mを引き取ってもらえたのである。(他チームからもスーバンのトレードオファーはあったものの、「一部給料をプレデターズが支払う」という条件付きだったため、全額引き取るといったニュージャージーにトレードが決まったようだ)
この浮いた$9M (実際は見返り選手のキャップヒットも考慮すると$6.7Mとされている) を持って、FA市場でフォワードを補強することができる

 

例えば、カイル・トゥリスをトレードで獲得する前よりうわさされていた、マット・ドゥシェーンがFA市場に出てくる

www.tennessean.com

 

例えば、ジョハンセン、トゥリス、ドゥシェーン。いずれもオールスタークラスのセンターが3人並ぶ攻撃陣はどうだろう。見ごたえしかない。

 

どうなるかはわからないが、このトレードを評価する際は、このFAで補強したフォワードも見返りだったと考えて評価しないと、正当な評価は下せない

 

それまでは、「唯一のスーパースター」のハイライトでも見ながら、ナッシュビルの今後、スーバンの今後に幸多きことを願おう。


PK Subban Career Highlights

 

Nashville Predators: The Making of Smashville (Sports) (English Edition)

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