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コンセプトは「スポーツ×○○」。スポーツに関連するいろいろなものを書いていきます。

マーカス・ストローマンと歩んだこの6年間を振り返る

ブルージェイズのエースだった、マーカス・ストローマンがトレードされた。

www.mlb.com

 

ここまで、コンスタントに毎年ローテーションを守りぬける、エース・2番手クラスの投手だっただけに、見返りは「トップ100に入る若手有望株+数名のマイナーリーグ有望株」くらいはあるだろう…と言われていたのだが、ふたを開けてみると、トップ100に入らない若手選手×2
ちょっと、拍子抜け感は否めないが…

これで、2015年の地区優勝を知る選手は、当時まだレギュラーとは言い切れなかったジャスティン・スモーク (彼もトレード濃厚) と、先発からセットアッパーに回ったアーロン・サンチェスだけになってしまった。

 

ブルージェイズを見始めたころは、野手 (スナイダー、アレンシビア…) も投手 (ドレイベック…) も若手有望株がパッとせず、チームもそのせいか浮上できない…という時期が続いただけに、マイナーから昇格して結果をしっかりと出したストローマンは、熱い性格もあって現地での人気も相当だったが、僕個人としても思い入れの強い選手でもあった。

 

(参考)

www.tommyball.jp

 

今日は、メジャー昇格からブルージェイズの黄金期 (?) を支え、再建に入るここ2~3年を孤軍奮闘で支えたエースの功績を振り返ることとしよう。

 

メジャー昇格前

ブルージェイズの2012年: 73勝89敗 (勝率.451) アメリカンリーグ東地区4位

ストローマンの2012年: (A-級・AA級合計) 15試合0先発 19 1/3回 3勝0敗 防御率3.26 WHIP1.293

相変わらず低迷していた2012年に、ドラフト1巡目でストローマンが指名された。全体22位指名ながら、当時の評価は、「最もメジャーリーグに近いドラフト候補生」という評価だったようだ。
ストローマンの2012年は、A-級のバンクーバー・カナディアンズからはじまり、7試合で1勝0敗、防御率3.18をマークすると、8月にはAA級ニューハンプシャー・フィッシャーキャッツに昇格。8試合で2勝0敗、防御率3.38。すべてが順調に見えたが、8月28日に薬物検査でメチルヘキサアミンが検出され、薬物違反で50試合の出場停止処分を受け、シーズン終了となった。

 

ブルージェイズの2013年: 74勝88敗 (勝率.457) アメリカンリーグ東地区最下位

ストローマンの2013年: (AA級) 20試合20先発 111 2/3回 9勝5敗 防御率3.30 WHIP1.128

メジャーの本チャンのチームは、相変わらずの低迷だったわけだが、マイナーで有望株が育ってきたタイミングで、ホセ・レイエスやマーク・バーリー、ジョッシュ・ジョンソンやRA・ディッキーといった実績のある選手を次々と補強し、2013年に勝負をかけた
しかし、まさかまさかで、前年からの1勝のみの上積みに終わる。しかも、9年ぶりの地区最下位、引き抜かれたジョン・ファレル監督がボストンで世界一、というおまけつき。

 

そんな中でストローマンは、2013年もAA級で迎え、50試合の出場停止が解けると、5月19日には復帰し、5回無失点で開幕。7月2日には、6回2/3を投げて13奪三振と好投。2013年度の「トップ100プロスペクト」リストでは、ブルージェイズの第3位の有望株となった。
この年は、1年を通してAA級に帯同し、20試合先発で防御率3.30, WHIP1.128と好印象な数字を残した。

 

 

有望株がメジャーデビュー ~2014年~

ブルージェイズの2014年: 83勝79敗 (勝率.512) アメリカンリーグ東地区3位

ストローマンの2014年: (AAA級) 7試合7先発 35 2/3回 2勝4敗 防御率3.03 WHIP 1.150
(MLB) 26試合20先発 130 2/3回 11勝6敗 防御率3.86 WHIP1.171

2014年には、失意の2013年で振るわなかった戦力が放出され、今年は何とも言えない1年の空気感があったが、予想外に勝ち越し。 

ストローマンとしては、チームトップクラスの有望株として迎えた2014年は、春季キャンプもメジャーに帯同。3月19日にマイナーのキャンプに送られると、開幕はAAA級バファローで迎えたものの、5試合で2勝2敗、防御率1.69という好調さや、ブランドン・モローの長期離脱もあり、開幕後1か月もするとメジャーに昇格。この時点で、チーム2位の有望株とされていた。 

5月6日には、リリーフ登板で1回1/3を投げて勝利投手。その後、5月18日には先発調整のために一度AAA級に降格するも、その12日後には再び昇格。同日、メジャーリーグでの初先発となり、6回を被安打5, 6奪三振, 四球なしの自責点1のQSで、初先発初勝利を飾った。
その後8月9日には自身初の9回を投げ切り (延長戦突入により勝敗つかず)、9月8日にはわずか93球で完封勝利をあげた。

その後9月中旬には、故意死球による出場停止や、復帰後には救援転向などもあったが、1年目からしっかりとローテーションを守り、2ケタ勝利をマーク。130.2回投げて被本塁打は7本という安定感も光り、ついにハラデイ以来の生え抜きエースの登場か…と期待をさせたのだが…

 

 

まさかの怪我、そして早期復帰 ~2015年~

ブルージェイズの2015年: 93勝69敗 (勝率.574) アメリカンリーグ東地区1位
プレーオフは地区シリーズ勝利後, アメリカンリーグ優勝シリーズで敗退

ストローマンの2015年: (MLB) 4試合4先発 27回 4勝0敗 防御率1.67 WHIP0.963
(*リハビリ登板は割愛)

 

前年オフに背番号を54から6に変更するとアナウンスして挑んだ2015年。6番は、ストローマンの祖母の誕生日であった3月6日よりきているらしい。
弱冠2年目24歳ながら、エース候補としてキャンプを迎えたが、キャンプにてバント処理練習中、まさかの左膝の前十字靱帯断裂で、シーズンアウトと思われた。

4月5日には60日DL入りし、手術、リハビリを重ねたが、ジョッシュ・ドナルドソンらの補強で「今年こそ」ムードだったブルージェイズにとっては、痛すぎる離脱であった。

この間、大学に戻って単位を取得したというのもなかなかにすごいエピソードだが、それよりもすごいのが、「シーズンアウト」と思われながらも8月にはリハビリ登板で復帰。8月11日には復帰登板を果たした。8月24日には40球のシミュレーションゲームを、4日後には51球を投げた。9月にはA級, AAA級で1試合ずつ投げた後、9月11日には60日DLから復帰し、ダブルヘッダーの2試合目で先発登板。雨天による中断もあり、5回を投げたところで交代することとなったが、なんと9月の4試合に先発し、4戦4勝。防御率はなんと1.67で、WHIPは1点を下回るという絶好調ぶりだった。
当然、本人の好投も、地区優勝の一助となったわけだが、それ以上に、ストローマンの復帰により、アーロン・サンチェスがブルペンに回ってもローテーションの質が落ちなかったことが大きい。

22年ぶりの地区優勝、22年ぶりのプレーオフとなったブルージェイズは、アメリカンリーグ地区シリーズの初戦を、トレード・デッドラインで補強したデービッド・プライスに、2戦目をストローマンに託した。14人連続で凡退させるなど、7回を奪三振5の3失点に抑え、勝負の第5戦には、6回被安打6の2失点で試合を作り、6-3の逆転勝利に貢献した。 

 

 

エースとしての独り立ち…? ~2016年~ 

ブルージェイズの2016年: 89勝73敗 (勝率.549) アメリカンリーグ東地区2位
プレーオフはワイルドカード・ゲームに勝利後, 地区シリーズも勝利。 アメリカンリーグ優勝シリーズで敗退

ストローマンの2016年: (MLB) 32試合32先発 204回 9勝10敗 防御率4.37 WHIP1.289

22年ぶりの地区優勝の歓喜から、デービッド・プライスが抜け、代わりにJA・ハップを補強したものの、戦力ダウン感は否めない状態で2016年を迎えたブルージェイズ。正直、フルシーズン、ストローマンがいることが最大の補強というくらいであった。

プライスの抜けたローテーションから、ストローマンが開幕投手に指名され、名実ともにブルージェイズのエースに。開幕戦はタンパベイ・レイズ相手に9回途中まで投げ、被安打6・奪三振5で3失点。見事勝ち星を収めた。その翌月、自身の誕生日でもある5月1日には、またもレイズ相手に自己最多の9奪三振を記録し、ブルージェイズの投手の誕生日の最多奪三振記録も併せて更新した。らしい。奪三振記録は、その後8月1日に、13奪三振を奪った試合が自己ベストとなるのだが…

この年は、年間を通してローテーションを守りぬいた初めてのシーズンとなったものの、好不調波が大きく、2けた勝利に届かず。防御率も4.37, WHIPも1.289と、過去2年より大きく数字を落としてしまった。その中でも、ゴロ率60.1%はリーグトップ、フライ率20.4%はリーグ最少と、「らしい」投球を展開していたのだが…

ブルージェイズはなんだかんだでワイルドカードは確保。2年連続のプレーオフとなったが、一発勝負のワイルドカード・ゲームにストローマンを送り込む。
6回を投げ切り、6奪三振・2失点で試合を作ると、その後はこれでブルージェイズが勝利。


BAL@TOR: Encarnacion launches walk-off homer in 11th, Blue Jays to ALDS

ワイルドカード・ゲームに投げたストローマンは、続く地区シリーズの第4戦に先発予定だったが、ブルージェイズは2年連続の対戦となったレンジャースをこの年は3勝0敗でスイープ。
アメリカンリーグ優勝決定戦では、第3戦に先発したものの、5回1/3を4失点と振るわず。ブルージェイズも2年連続でワールドシリーズに届かず敗退となった。

 

 

沈みゆくチームと孤軍奮闘のエース ~2017年~

ブルージェイズの2017年: 76勝86敗 (勝率.469) アメリカンリーグ東地区4位

ストローマンの2017年: (MLB) 33試合33先発 201回 13勝9敗 防御率3.09 WHIP1.308

2年連続プレーオフ進出から、4番・DHでチームを支え続けた、"Edwing"ことエドウィン・エンカーナシオンが、契約切れとともに移籍。全盛期のパワーが失われつつあったホセ・バティスタも契約切れとなったが、1年契約 (+オプション) で残留。しかし、Edwingの移籍は、1つの時代の終わりを意味しているようでもあった。

2016年シーズンを終えてサービスタイムが2年超になり、所謂「スーパー2」で年俸調停権を獲得したストローマン。その年俸調停で、ストローマンの希望が採択され、 3.4MUSDの年俸を勝ち取った。
開幕前には第4回WBCのアメリカ代表に選出され、自身が出場権を保持していたプエルトリコとの決勝戦に先発登板して6回まで無安打、7回途中まで投げて無失点で勝利投手となり、一躍世界のスターに。大会MVP、大会最優秀投手賞を受賞した。

そんなシーズンは、結局、エンカーナシオンの穴を埋められずに、負け越しで終わる。

この年は、シーズン途中、7月のヤンキース戦で右中指にマメができて降板したり、9月のオリオールズ戦では打球が右ひじに直撃したり、というアクシデントもあったが、ローテーションを守り抜き、33試合に先発し、2年連続200イニングとなる201回を投げた。
2年連続200イニング到達は、ブルージェイズのここ20年の選手では、7人目となった。らしい。
苦しんだ昨年からは一転、この年はWHIPは1.308と悪化しながらも、要所を締める投球で防御率3.09、13勝9敗と奮闘した。この年も、ゴロ率62.1%はリーグ最高、フライ率19.7%はリーグ最少となった。

この年は、投球以外の評価も高く、ゴールドグラブ賞を獲得。
さらには、打撃面でも存在感を発揮し、4月25日にはセントルイス・カーディナルスとの一戦、延長戦で代打で出場すると、MLBでの初安打をツーベースで記録。ブルージェイズの投手による、史上初の代打でのヒットは、1971年以来のアメリカンリーグの投手による代打での長打でもあったそうだ。
そして5月18日には逆方向へのホームランも記録。2003年のマーク・ヘンドリックソン以来、ブルージェイズの投手では2人目のホームランとなった。

チームとしては残念1年ではあったが、2016年に苦しんだストローマンとしては、復活の1年になったのは間違いない。

 

 

さらに沈むチームとぬぐえない疲労 ~2018年~

ブルージェイズの2018年: 73勝89敗 (勝率.451) アメリカンリーグ東地区4位

ストローマンの2018年: (MLB) 19試合19先発 102 1/3回 4勝9敗 防御率5.54 WHIP1.476
(*リハビリ登板は割愛)

 

1年契約+オプションだったホセ・バティスタは、157試合に出場しながらも打率.203 23HRと苦しみ、オプション破棄でFA移籍が確定。こうしてひとつの時代が終わった

その裏で、2年連続で年俸調停になったストローマンは、今年は年俸調停に敗れ、要望額だった6.9MUSDではなく年俸が6.5MUSDに。

チームの顔だったホセ・バティスタもいなくなり、2015年のMVPだったジョッシュ・ドナルドソンも契約が切れることから、移籍濃厚といわれる中で、チームは地区最下位近辺に沈む。
そんなチーム状況に親和するかのように、ストローマンも、開幕後0勝5敗、防御率7.71と苦しんだ後、5月11日に右肩の疲労で10日のDL入り。

1か月後にリハビリ登板で実践復帰すると、6月23日に先発で復帰。5回を無失点に抑えた。しかし、この年は8月に右手のマメで2度、途中降板。9月に再度復帰するが、その復帰試合でもマメが再発し、そのままシーズンエンド。19試合の先発で4勝9敗、防御率5.54。

勤続疲労もありそうだが、同時に突如コントロールが悪化し、打ち込まれるようになったリッキー・ロメロの悪夢もちらついた。

 

 

復活、見えてきたFAと大型契約、そして… ~2019年~

ブルージェイズの2019年: 40勝67敗 (勝率.374) アメリカンリーグ東地区4位 (トレード時点)

ストローマンの2019年: (MLB; トレード時点) 21試合21先発 124 2/3回 6勝11敗 防御率2.96 WHIP1.227

 

2018年の途中にジョッシュ・ドナルドソンも放出し、完全に若手育成に舵を切ったブルージェイズの中で、あと2年でFAになるストローマンの去就が危ぶまれるようになった

その中でも、ストローマンは2016年以来2度目の開幕投手に。
シーズン前半の17試合で防御率3.04と好調だったこともあり、さらに沈みゆくチームのエースとして孤軍奮闘。結果的に辞退したものの、自身初のオールスターにも選ばれた

しかし、案の定というべきか、7月末のトレード・デッドラインを目前にして、ニューヨークへトレード。浮き沈みも多かった6年間の通算成績は、135試合129先発 789 2/3回 47勝45敗 防御率3.76 WHIP1.278となった。

 

 

5フィート8インチ (1.73m) という決して高くない身長。
21世紀にMLBで先発した投手のうち、5フィート10インチ未満の選手は、わずか6人だという。

それでも、1年目から、Height Doesn't Measure Heart (HDMH) というモットーで、 ブルージェイズを支え続けた選手。

 

振り返ると、大学生活の後半にメジャーデビューし、最後の1年で地区優勝を勝ち取り、社会人になり、いろいろと揉まれていく中で、再建期に入るブルージェイズ…なんとなくいろいろと重なるものがあるのだが、その中で、間違いなくストローマンは中心にいた。

もしかしたら、SNSでの発信や、物怖じしない発言など、ニューヨークの街のほうがストローマンにあっているところもあるかもしれない。

どうか、メッツでも、元ブルージェイズのプロスペクトだったシンダーガードとともに、最強のローテーションを作っていってほしい。

 


Marcus Stroman 2015 Highlights 'The Great Return